ネットワーク
ローマ人がはじめて街道をつくったのではない。しかし、街道は一本でなく街道網として構成すれば、その機能もより高まることを考え実行したのはローマ人である。ローマ人がはじめて、法律を作ったのではなかった。だが、法律も、多岐にわたる法律体系にしてこそ法治国家として機能しうると考え、それを実行した最初の民族はローマ人である。そしてこの二事に共通しているのは、必要に応じて”メンテナンス”をほどこさないと機能の低下は避けられないという、人間世界の現実であった。法律面での”メンテナンス”とは、現状に即して改めることである。法体系の創始者としてならば誰もが認めるローマ人だが、法律を彼らは、いったん定めた以上は何がなんでも護り抜くべきものとは考えなかった。それよりも、街道と同じように、必要に応じて”修理修復”すべきものと考えていたのである。つまり、システムとはそれが何であろうと現状に適応するように”修理修復”されるべきものであり、それを怠ればシステム自体に疲労をもたらし、ついには崩壊するという、長期的にみれば大変に非経済的なことに終わるのを知っていたのだ。
塩野七生「ローマ人の物語」17(新潮文庫)
| 固定リンク
|
コメント