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さりげなく

「五〇年代の末から六○年にかけては世の中がひどく荒れた。日米安全保障条約の改定をめぐって、あとから思えば異常なくらいに政治と社会は激動をした。無関心ではいられなかったが、その渦中に飛び込む私ではなかった。幼いころから落語に養われた人間は、徒党したり、行進したり、騒ぎを起こしたりしなければ物事が解決しないと信じる人々の気がしれない。」
「とかく世間は騒がしかったが、オリンピック後の不況を脱して高度経済成長期が始まり、それが生む変化ー破壊と建設もまた騒々しくもにぎやかだった。『大きいことはいいことだ』。大きなことを大きな声で言うのが喝采を受ける。そうとばかりも言えないよ、と呟くのが落語の心を知る者だが、大声には抗しがたく、また、負けじと声高になる野暮は控えてしまう。二一世紀初頭のNHKはそんな日本を『プロジェクトX』というテレビ番組で妙にものものしく回顧しているが、それがかなりの視聴率を得ているのは、直視より美化を習性とする、じつはひ弱なわが国民性ゆえかと思う。直視を避けるから、もっと前の時代のことで、いつまでたっても言いがかりをつけられたりする。 」

「落語名人会夢の勢揃い」京須偕充(文春新書)より

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